【執 筆】永芳 郁文 |
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太もものつけねが折れた時!
その時あなたは?
- 豊前豊後地域連携パスをご存知ですか?-
皆さんは、太ももの付け根が骨折するというケガについてご存知でしょうか?
この骨折は70代以上の方に多くみられ、寝たきりの大きな原因になるだけでなく、本症の 1年以内の死亡率は10%前後に達することも言われています。高齢化社会の到来とともに年々増加の傾向を示し、日本での受傷者数は年間、約15万人、30年後には 27万人になると推定されています。
このようなケガを大腿骨頚部骨折と言いますが、中津市近郊の現状はいかがなものでしょうか?
2006年、2007年の当院の傾向を調査しますと、①毎年150人前後の方が治療され、その半数の方は、中津市外にお住まいであること、②自宅に帰られる方は30%前後であり、やはり半数はリハビリ施設へ転院を余儀なくされる事、また、③全体の1/4の方が心臓や肺の病気などで内科へ転院されていかれることなどが明らかになりました。また④独り暮らしや90歳以上の方も多く、ご本人のみならず御家族にとっても将来の見通しも含め、大きな不安の種となっているという現実が浮き彫りにされたのです。
地域で安心した医療、介護を受けるにはどうしたらよいのでしょうか?初めての経験にどう対応すべきか途方に暮れるご家族の御不安は、如何にしたら和らげることができるでしょうか?
このような問題に前向きに取り組んでいくべく、当院では、2007年3月に、地域連携パス研究会準備室を立ち上げを行い、頚部骨折に対する医師会主導での地域連携パスの実現に向けて取り組んで参りました。
パスとは、パスポート、フリーパスなどに使われるパスの意味です。旅行には旅のしおりがあるように、事前計画や予定が解っていると安心です。これを、ケガしたときにも発行して利用できないかと考えられた新しい仕組みであり、日本全国の多くの地域でも検討され始めた、まさに新しい流れでありました。
そのような中、北部大分地方におきましても、多くの施設のご賛同を頂き、2007年6月に第1回地域連携パス研究会を開催でき、2009年秋より、医師会、歯科医師会、薬剤師会の3師会合同連携にも取り組んでいます。
地域連携パスのしくみを簡単にご説明しますと、中津市地域近郊を中心として、行橋から日田、豊後高田にいたる北部大分地域で、患者さんが安心して転院や他施設への入所をスムーズに行い、ご家族のご心配や御不安に対し少しでもお役に立てるようにと、医療スタッフや福祉スタッフが施設の枠を超えて協力していくシステムだということができます。なによりもおケガされた方やご家族に、その方々に最も適した治療コースをご説明でき選んで頂ける、住み慣れた地域で安心して治療や介護を受けることができるということを目標にしています。
現在までの約4年間、十数回に及ぶ会合の中で、信頼と連携のための意識が醸造され、文字どおり現場の意見に基づく医療介護支援体制が実現しつつあります。今後は骨折予防や骨粗鬆症への対応も、地域でのネットワークで支えることはできないか、即ち、さらなる連携医療の実践を目指せないかと考えています。多くの困難な点もある一方、大きな可能性も広がっており、絵にかいたモチにしないためにも、5年、10年、と長期にわたり、理念と夢をもって楽しく取り組んでゆく所存です。
もしなにかお困りのこと、お気付きの事などがありましたらいつでもご相談いただければ幸いです。医療、福祉関係者だけでなく、皆様からのお声により、この地域連携というシステムは育まれていくものだと考えております。